妖刀奇譚






「確かに元気いっぱいって感じだけど、そこまでお転婆じゃなくない?


子どもならそのくらいやるもんだと思うよ」


「あの時代の貴族たちにしてみりゃ、とんでもなく行儀の悪いことだったらしいぞ。


子どもだからといくらか目を瞑られていたが、それでも目に余るところが多い様子だったな」


「へえ……」



現代のいわゆる『いいお家』に生まれた溌剌とした女の子のような感覚だろうか。


でも、幼い頃から粛々としているよりはずっといいのではないかと思う。



「それになかなか賢く聡い性質だった。


寺の誰にも教えられていなかったのに、自分がそこの生まれではないことや、自分の両親がなぜそばにいないのか、幼いなりに察していたからな」


「そっか……いくら本人でも、天皇の娘だなんて教えられないもんね」



玖皎が身体をずらし、窓の方に顔を向けた。



「……それと、毎日のようにおれに話しかけていた」


「え?」


「ああ、見鬼の才もなければおまえのような力も持っていない、普通の人間の姫だったぞ。


だが道臣から、護り刀にはおれが……魂が宿っているという話を信じきっていてな。


侍女たちはおれを畏れたり気味悪がったりしていたが、姫は違った。


妖怪退治のとき以外は、特に昼間中はおれを自分の近くに置いておくようにしていた。


それに、ただ置いておくだけじゃなくて、何かあるごとにおれに声をかけてきた。


山寺に居る連中で唯一おれの声が聴こえる道臣でさえ、あんなに親しげに話しかけてきたことはなかったぞ。


おれはかつて人間を食い殺してきた妖怪だというのに、怖いもの知らずなおなごだった。


まあその内容は、今日の天気はどうだとか、さっき食った飯や菓子がうまかったとか、とりとめのないものばかりだったな。


幼子らしい話ばかりだった」