「それが玖皎だったってこと?」
玖皎は頷き、首の後ろあたりを掻いた。
「あいつの式でなくなっても強力で、なおかつ道臣にも扱えるように調整できる妖怪はおれだけだったらしい。
まさか十二神将のうちの誰かをつけるわけにもいかないだろうよ。
だが、相性が悪くて道臣の身体におれの波動はどうも負担が大きかったらしくてな。
それを軽減し、さらに人間を勝手に襲ったり乗っ取ったりできないように呪いをかけ直す必要が生じて、弼柾に協力させておれをつくり直したというわけだ。
『霧雨玖皎』の名は、そのとき晴明に与えられた。
たとえ式でなくなったとしても、名を与えることで一生支配できるようにとな」
「……要するに、万が一その播谷道臣って人があんたを使いきれなくてあんたが暴走しちゃったりしても、安倍晴明なら確実に止められるようにしたってこと?」
「平たく言えばそうだな」
「へえ、名前をつけるだけでそんなことできるんだ」
名前をつけることは、その対象を区別して認識しやすくしたり願いをこめたりするための行為であるのはどこかで聞いたことがあった。
与えることによって相手を支配できるという話はびっくりだが、言われてみれば確かにそんな気もする。



