――そういえば。
思葉は笑顔を消して、まだふくれっ面をしている玖皎を見直した。
層から元の場所に戻ってすぐ思葉に駆け寄り、彼女の無事を確認した彼が口にした言葉を思い出したのだ。
あのときは気にするどころではなかったが、改めて考えてみると少し妙である。
玖皎はほとんど無意識のうちに言っていた様子だった。
それはつまり、何かしら思い当たるものがあるという意味だ。
聞くべきではないような気もするが、なぜか同時に聞かなければならないという気持ちにもなっていた。
思葉は迷ったけれど、思い切って尋ねることにした。
聞かなかったせいで後悔なんてしたくない。
軽く呼吸を整えて思葉はくっと背筋を伸ばした。
「玖皎」
「なんだ」
「……『今度は』って、あれ、どういうことなの?」
玖皎がふくれっ面を引っ込め、はっとした様子で思葉を見た。
唾を呑み込んで思葉は繰り返す。
「さっきあたしを助けてくれたとき、あたしがどこも怪我してないって答えたときに言ったでしょ?
『今度は護れて』ってさ。
それって……『今度は』って、どういう意味?」
質問している途中で、唇を引き結んだ玖皎が俯いた。
思葉は胸の奥にずしりと鈍痛を感じた。



