妖刀奇譚






「こちらはおれの波動が人型を形成して実体化したもの、いわば実体のある虚像だ。


意識の主軸は本体だけでなくこの虚像にも置けるようになってはいるが、本体を無視して動き回れそうにはないかな」



ほら、と玖皎が軽く両腕を広げる。


乗り出して目を凝らしてみると、玖皎の腕や服、手の甲や指先、それ以外にも顔や首や髪、あらゆるところから蜘蛛の糸のようなものが伸びているのが分かった。


それらはすべて、玖皎の後ろにある太刀に繋がっている。



「それも安倍晴明の術かなにか?」


「だろうな」


「そこまで術をかけられているなんて、あんたよっぽど気に入られていたのか嫌われていたのかのどっちかだね」


「あいつは変わり者なんだ。


気に入ったやつほど綿密な術や呪いをかけて手駒にしたがる」


「気に入られてるんならいいじゃん」


「いいわけあるか」



玖皎がちっと舌打ちして再び腕組みした。


その動作がなんだか拗ねた子どものように見えて、思葉は少しだけ笑った。


自分より遥か長い時間を生きている玖皎が急に幼く見えたのだ。


先ほどあの恐ろしい付喪神をあっという間に追い出してくれた青年と同一人物なのか疑いそうになる。