玖皎はそこで話を区切り、顔の前で通学鞄を盾にしている思葉をじと目で睨んだ。
思葉はいぶかしむ目つきで通学鞄の陰から玖皎を見返す。
「……今でも人間の魂を食べ回ってんの?」
「するか、あほ。
夜警中の晴明に見つかって勝負に負けて、あいつの式になってからは一度たりとも人間の魂は食っていない。
取り込んでいるのは弱い妖怪や自然の中にある霊力だけだ。
最も、晴明の弟子でもあり刀工でもあった三条弼柾(すけまさ)に鍛え直され呪いを融かしこまれてからは、人間の身体を操る力は残ったが魂は吸収できなくなったから安心しろ。
それに万が一おれが人間の魂を口にしようとしたら、晴明の呪いで殺されるからな」
「へえ、あんたつくり直された刀なんだ」
「元より刀身は長くなったぞ」
無害であると分かって、思葉は通学鞄を元に戻した。
玖皎は警戒されなくなったのに、まだどこか不服そうにしていた。
束の間目を閉じてこめかみのあたりを指で掻く。
「そのときに融かしこまれた呪いによって、おれは人間のそれに酷似した性格になった。
人型になれる術も別にあったらしいが、晴明がおれには必要ないと判断してそちらはかけられておらん。
が、それでもこうして人の姿になれたということは、おそらくこの呪いが長い間おれに染みついていった影響なのかもしれんな。
仕組みはさっぱりだが、そう考えるのが妥当であろう」



