妖刀奇譚






[安倍晴明 921~1005]



思った通り、桁が一つ違っていた。


千年経過した今でも当初と同じように術が効いているとは、驚きを通り越して衝撃的である。


改めて安倍晴明という陰陽師の偉大さを感じた。



「……す、すごい人だったんだね、安倍晴明って」


「あいつは人の領域を軽々超越している、もはや化け物だったぞ」



玖皎が肩を竦めて小さく笑った。


この短時間でいくつも表情が変化している。


本物の人間と同じくらいかそれ以上に豊かだ、本当に太刀なのかと疑ってしまいそうになる。



「晴明が十二神将を式として使役していたことは知っているか?」


「うん」


「なら知っているかもしれんが、あいつにはそれ以外にも何体か式がいてな。


その大半が滅多打ちにした中で気に入った妖怪なんだが、そいつらの姿や心を人間に近づける呪いをかけるようにしていたんだよ。


人間と妖怪では、神将以上に価値観や考え方の差が大きくてなにかと齟齬が絶えんかったらしい。


刀の妖怪だったおれにもその術は施されておるぞ」


「えっ、あんた付喪神じゃないの?」


「いつおれがそんなことを言った」



確かに、玖皎が自身のことを付喪神と言ったおぼえもなければ、はっきりと自分はどういう存在なのかと口にしたこともない。


思葉が古い刀に憑いているから付喪神だろうと勝手に思って、それがすっかり定着してしまっていた。