知っているも何も、超が付くほどの有名な歴史上人物だ。
日本人で彼の名前をまったく耳にしたことのない者はいないだろう。
彼の活躍や彼自身を題材にしたサブカルチャーも多い。
そのことを手短に教えると、玖皎は感心した顔つきになって腕を組み替えた。
「ほう、この時世においてもあいつの存在は知れ渡っているのか。
このことを知ったら、あの食えない狐もさすがにさすがに驚かざるを得ないだろうよ」
「……それで、その安倍晴明はあんたにどんな術をかけたのよ?
死んでからもずっと術が消えないままでいるのはちょっとびっくりだわ」
「ある程度力を持つやつがかけた術なら、術者が死んでからも残ることが多いんだ。
まあ、おれのようにおれが壊れでもしない限り絶対に解けない術をかけられるのは晴明以外にはいないよ。
他の術者はどんなに頑張っても、死後百年経てば術の力は自然と薄れるものさ」
「ひゃ、ひゃく……」
(あれ、安倍晴明が死んだ年って確か……)
思葉は混乱しながら、通学鞄から電子辞書を引っ張り出した。
人名事典に『安倍晴明』と入力する。



