妖刀奇譚






「ねえ玖皎、いつ人の姿になれるようになったの?


あたしがお風呂入りに行ったときはまだなれなかったよね?」



視線が合う。


今度は玖皎が先にそらし、顎に指を当てて考え込むポーズをとった。



「……知らん、気が付いたらこの姿をとっていた。


おまえに尋ねられるまで気が付かなかったぞ」


「なんで気が付かなかったのよ。


あれだけ動いてれば途中で気づくでしょ、普通、鈍感にも程があるわよ」


「うるせえ、そんな余裕は無かったんだよ。


急に下にあったおまえの気配が消えて、店に張ってある永近の結界とは異なる空間ができていて、おまえがその層に行っちまったと分かってかなり焦らされたんだぞ。


外側に居たら中で何が起こっているかは観えないし感じることもできないからな。


どうにか層を穿って付喪神を店から追い出すまでは、やつを叩き斬ることで頭がいっぱいだった。


……だが、最も層の薄い場所を探し当てるために店へ降りたから、そのときには既にこの姿になっていたのだろうな」


「そ、うだったんだ」



視界の脇に入ったベッドの掛布団がずり落ちそうになっていたので、思葉は立ち上がりそれを直しつつ玖皎からさり気なく顔をそらした。