妖刀奇譚






「無防備って、しょうがないじゃん、あたしはただ観えるだけでおじいちゃんみたいな力なんてないし。


そんなのがつくられていたなんて予想できないよ、層の存在すら知らなかったんだから。


それに、閉まっていたはずの硝子戸が細く開いていたら、店に誰かいるのかって疑って確認しに行くのは普通でしょ」


「ほれみろ、完全に誘い込まれているじゃないか。


見事にやつの罠に正面から引っかかったというわけだ」



玖皎の言い方にとても腹が立ったが、すべて本当のことなので思葉は我慢した。


代わりに別のことを口にして気を紛らす。



「あの付喪神、逃げちゃったけど、野放しにしておいて平気かな?


あっちこっちでその層なんてものをつくられてたら迷惑だよ」


「その心配はないぞ。


やつと闘っている間にいくらか妖力を削いでやったからな。


実体のある人型の姿を保つので精一杯だろうよ」


思葉はぱちぱち瞬きした。



「あんた、そんなこともできるの?」


「少なくとも、こういう方面の力なら永近よりもずっと上だ」


「へえ」



(この男、けっこうやるかも。あ、男じゃなくて刀か)



得意気に笑う玖皎を見てそう感じて、彼が人ではなく太刀であることを思い出した。


喋っている姿も立ち振る舞いも人間のそれとそっくりで少しのぎこちなさもなく、うっかり失念していた。