「そっかあ、勘かあ。
やっぱそれって、骨董品店の孫娘だからか?」
「あんまり関係ないと思うけど」
「じゃあ何だよ?」
「知らないわよ」
自分のことなのにか?と少しバカにした調子で言う來世の背中を叩く。
そのとき授業開始のチャイムが鳴り響いた。
げえっと來世が顔を渋らせて階段を駆け上がる。
思葉も頑張って両足を動かした。
「やっべえ、こういうときに限っていつも遅刻気味な先生はちゃんといるんだよな」
「なにフラグ立ててるのよ、バカ來世。
てか、あんた課題は終わらせたの?」
「指されそうな範囲は全部やったし、残りは内職するから問題なし!」
予想していた答えに思葉は息の塊を吐いた。
こんな適当でも、成績は中学生のときから思葉よりずっといいので憎たらしい。
「そういうところ全部バレて内申点底辺になればいいのに」
「おまえさっきから酷くねえか?」
「盗み聞きしたやつに優しい言葉をかけてあげる義理なんてない」
4階にたどり着く。
廊下の窓から2階の職員室が見えて、数学担当の教師がまだそこにいるのに気付いた。
もう來世は教室のある方へ曲がってしまったので教えてやらない。
思葉は走るのを止めて、歩きながら息を整える。
ふと久保田のことが頭をよぎった。
彼はちゃんと謝るだろうか。
井上と三谷はそれを許してあげるだろうか。
それがやっぱり、少しだけ気になった。
でも、すぐに気にも留めなくなるだろう。



