妖刀奇譚






「んー、まあ……勘、かなあ」


「勘であそこまでピンポイントに分かるかよ。


久保田が井上と三谷より早く登校したとか、あいつが落としたのはわざとじゃなくて移動した花瓶をもとに戻そうとしたときに手を滑らせたとか」



思葉は曖昧に笑った。


昔から、思葉にはほかの人には観えないものが観えた。


そういう体質だったのだ。


けれどもそれは幽霊などの心霊的なものではない。


その類のものを観たことはこれまで一度もなかった。


思葉に観ることができるのは、『物』に関する事物の痕跡、残留思念のようなものである。


それは造った主の姿であったり、それに対して深い思い入れのある誰かであったり、最初でなくてもある一時の持ち主であった人だったりと様々だ。


その人たちの記憶に触れることも稀にだができる。


また、人だけではなく、その物が経験してきたなかで特に強烈に残っている出来事も観ることができる。


いつもではないし、観えるものも一定しない。


古い物だから観えるわけでも、新しい物だからまったく観えないわけでもない。


ただ何か複雑な想いや強い念に近い想いが絡みついているときほど、それははっきりと観ることができる。


さっきの花瓶も、久保田の後ろめたい気持ちや罪悪感が強く残っていたから彼だと分かるくらい観えたのだ。


霊感というべきなのか微妙なこの力は、思葉自身もよく理解していない。


だからこのことを來世に説明する気は起らなかった。