その表情がなんだか癪にさわるので、思葉は肘で來世の脇腹をつつきながら膨れる。
「なにがおかしいのよ」
「いや、さっきのおまえの話し方、すっげえきょどってたからさ。
おれや満刀根(まとね)のじいちゃんと話してるときと違いすぎるだろ。
おまえ仮にもお店の子だろ?
いい加減人見知り直さねえと、そんなんじゃ接客もうまくできねえぞ」
「うるさいわね、余計なお世話よ」
もう一度胸倉を 取ろうと手を伸ばしたが、今度はかわされてしまい舌打ちする。
代わりに思い切り脛を蹴りとばしてやった。
來世は唸り、片足でぴょんぴょん跳ねながら痛みに耐える。
「痛ってえ、おまえ本当に容赦ねえな」
「あんたに手加減なんかしてどうすんのよ」
「うわっ、鬼がいる」
大げさに怖がる來世を無視して思葉は階段を歩く。
1年生のクラスは4階にあるので、なかなかのぼるのがきつい。
運動部に所属しているクラスメイトたちにはいいトレーニングになると好評だが、中学のときからすっかり文化系になった思葉にはただの苦行でしかない。
空手部の來世は涼しい顔で、あっという間に思葉の横に並んだ。
「しっかしすげえな、思葉は」
「なにが?」
「さっきの久保田のことだよ。
おまえよく花瓶を割ったのが久保田だって分かったな」



