しまった、これでは意味が違って取られてしまう。
思葉は手を無意味にひらつかせた。
「あの、今、祖父が不在でして。
一週間後でしたらご依頼をお受けすることができるのですが」
「……どうしてもですか?お金は要りません、ただ、預かっていただきたいだけで」
男が残念そうな声音になる。
危うく情に負けそうになったが、思葉はこらえて永近の言いつけ通りに紙とボールペンを差し出した。
「申し訳ありません、あたしだけの判断でやっていいことじゃないんで。
ここにお名前とご住所ご連絡先をお願いできますか?
後日祖父が連絡いたしますので」
言い終えて思葉は下を向いた。
初対面の、しかも年上の異性とずっと顔を合わせているのは緊張する。
男は渋っていたが、やがて諦めたようにボールペンを取って紙面に走らせた。
それから力なく思葉に会釈をし、『とぼとぼ』という表現がぴったりな足取りで店を出て行った。



