この能力に慣れてからしばらくの間、思葉は『使い捨て』というものに強い苦手意識を持った。
今も使い捨てカメラや使い捨てカイロなどは、積極的に使おうとは思わない。
目まぐるしく便利な物が量産されていく社会にも、時々心がついて行かなくなる。
そんなに利便性ばかり求めてどうするつもりなんだろう。
少しぐらい不便でもいいじゃないか。
それでも一昔前より遥かに恵まれている。
世間には物が溢れている、だから人の感覚がおかしくなってしまう。
まだ使える物がゴミとしてゴミ捨て場に置き去りにされているのを見つけるのは、なんだか悲しくてみじめだ。
暖衣飽食の時代は、豊かだけれど乏しい。
豊かになればなるほど、大切な何かが人々の間で死んでいく。
何の欠片も感じ取れない量産品を手にするごとに、思葉は付喪神という存在を考えた。



