乱暴な足音が遠ざかってから思葉は息を吐き、教室へと足を向ける。
これ以上の口出しは無用だ。
言いたいことは言ったから、あとは久保田本人の判断に任せておく。
「わーーっ!」
「はあ?」
「……そんな顔しなくてもいいだろ?」
思葉が曲がり角にさしかかったとき、そこから來世が飛び出してきた。
しかし思葉がちらとも驚かず、怖い顔で睨みつけてきたのでしょんぼりする。
ため息をついた思葉は來世のYシャツをぐいっと引っ張った。
「やっぱり盗み聞きしてたのね」
「あ、やっぱ分かった?」
「バレバレよ、久保田くんに気づかれなかったのが不思議なくらいね。
ったく、高1にもなって何してんのよ、恥ずかしくないの?」
「いててて、引っ張るなって、首絞まる。
そりゃ幼馴染がろくに喋ったことのない男のあとつけてたら誰だって気になるだろうが」
つまり思葉の行動はすべて筒抜けだったのである。
それにも腹が立つ。
「言っておくけど、今のあたしと久保田くんの話は」
「分かってる、誰にも言わねえよ」
「約束よ」
頭を叩きつつ思葉はYシャツを離してやる。
くずれた襟元を軽く直して横に並び、來世は楽しそうにくくくと笑った。



