「確かに玖皎の声が聴こえなかったら、すぐにおじいちゃんに返していたかもしれないね。
そもそもあたしの部屋に持ち込まなかったと思う」
これは本音だ。
玖皎に触ろうとしたとき、彼の声が聴こえていなかったら、自分の部屋ではなく永近の部屋に運んでいた。
声が聴こえたからこそ、玖皎に興味を抱いたのだ。
「まあ、そんなに気にしないでよ、預かったからには最後まで責任持つからさ。
平安時代から現代社会まで生き延びた古刀だもん、大切に扱わなくちゃ罰が当たるわ」
「……おれに、そんな価値などない」
玖皎がぼそりと言った。
通り過ぎていく空気と同化するような声だったので、思葉の耳には半分も届かなかった。
「え、何て?」
「あれ、思葉?」
聞き直したとき、ふいに前方から声を掛けられた。
細い路地から、同じく自転車に跨った來世がきょとんとした顔で出てくる。
幼馴染みの登場に、玖皎との話は終了せざるを得なくなった。



