「お別れの挨拶ですかね?」


「…そう簡単に別れとか言うなよ」


「けど…もう、二度と会えないかもしれないじゃん」




私の言葉に、彼の深紅の目が少し伏せた。

彼の綺麗な白銀の髪が、外から舞い込んだ風と共に揺れた。



彼のクセ。
悲しかったり困ったりすると、立派な10cm弱の2本のツノを触る。

現に今も、落ち着かないように触っていた。



……私は、

そんな彼を羨ましく思う。


…そしてそんな彼は、私の婚約者でもあった。




濃紺の髪に深紅とは言えない薄い赤の目。

オマケにツノは右に1つ。


私は…鬼の血が半分しかないから。

ここ、鬼の村は全員が純血であることに誇りを持つ村。


鬼の数も減ってはいるけど…鬼の村にいない者を集めれば、他の妖よりまだまだ多い。



だから純血を産み出すことは難しくない…むしろ、当然。



そんなことが当たり前の村に、祝福されながら産まれるはずだった族長の家柄の1人娘が私。




………鬼の父と人の母を持つ、混血の娘。