「…行こっか、金鞠。 ……………じゃあね、律希」 返事も待たず、私たちは部屋に入った。 近づいていたはずの距離が、また遠くなっていく気がした。 そして、距離を広げているのは私で。 人間、誰にでも秘密がある…とある人間の本でそんな文章を見た。 きっと律希にも秘密があって。平井先輩にもあって。凛にもあって。 ……もちろん、私にもあって。 だからね、律希… ごめんなさい。 「……私はきっと、あなたの一族を好きになれない」 金鞠が不思議な顔をする横で、私ドアにもたれかかりながらつぶやいた。