「ねえ、朔」



銀花は振り返って、仏頂面をした朔を呼んだ。



「朔は、妖が嫌い?」



静かな問いに、朔は迷いなく頷く。



「嫌い――いや、憎悪と言った方が、まだ近いな」



「そっか。……あたしは、好きだよ」



そう言った銀花の顔を見て――朔はすぐに目をそらした。


愛おしげに目を細めた銀花を、なぜか直視することができなかった。



「あたしは、妖が好き。でも人間も好き。どちらかが悪だとか、そんなのない」



人間の中にも、心優しい者も、邪悪な者もいる。

人間が何か悪いことをするとき、それは単純な悪意から起こることもあれば、致し方ない理由があることもある。



それは、妖だって同じこと。