一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】



指定時間の夜中、麗は宮殿内の池に向かった。


月明かりしかないため、きちんと灯りをもって。


「…ひ、日子さま…」


彼はもういて、麗は名前を呼ばずにはいられなかった。


――前よりも背が伸びた。

――前よりも髪も伸びた。


――ああでも、やはり若干お痩せになられた。

――どこか悲しそうな目は変わらないのですね。

――月明かりに照らされた日子さまは、まるで天に返ってしまいそう…


「久しいな、麗」


燐とした声で名前を呼ばれ、つい顔が笑みに染まる。

「はい、日子さま」

「髪型を変えたのか?似合ってる」

その何気ない一言にも赤くなってしまい、思わず顔を池の方に背けた。

「ひ、日子さまは…お痩せになられました…」

「そうか?最近色々あったからな」

「耳にしてます。日子さまの御功業は…」

「…ありがとう」


ふ、と柔らかく笑った。

美しいと麗は口にしそうになり、慌てて飲み込む。