一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】


(……日子さま…)




そして、麗の予感は的中することになる。




その夜、彼女のもとに徐福から木簡が届いた。



(っ…)



『会いたいから待っている』と。

その一言と、場所と時間だけ記してあった。



まちがいなく、何かしらの異変があったのだ。



場所は、宮殿内の池の前。


雪が降るか降らないかのこの季節に、来るものはまずいない。

指定した時間も、誰もが眠る夜中だ。


絶好の場所と時間なだけに、余計に不安が増した。


(何があったのですか…日子さま…)


思わず木簡を握りしめ、部屋を睨む。


(んっ…?)


ふと、麗は部屋にあるものに気がついた。

木簡がもうひとつ。

忘れられたように置いてあり、暗号化されていなかった。


徐福からのものではない。


ならば、誰からのものなのか。


開いてみれば、それは父からのものだった。



(お父様の…)



今の緊急事態に必要ないのだが、とりあえず読むだけ読もうと手を伸ばした。