一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】




「あっ…麗!?」



カツンと木簡が麗の手から滑り落ちる。


駆け寄った傀が、それを慌てて拾った。


いつも冷静な彼女に似合わぬ失態に、傀も驚いていた。


「…そんなに驚いたの?」


麗に木簡を渡しながらため息をつく。


「今、なんて…」


「だから!大王さまの御子の故亥さまが全権を受け継ぐんですって!まだ噂の段階だけどね」


「だって…大王さまはまだ、お若いじゃない…」


驚きを隠せない麗に、傀は笑って答えた。


「珍しくない話よ。遺言ってやつよ。やっぱり末っ子が可愛いのかしら」


最新の豪奢な飾りのついた黒髪をかきあげて、傀は嬉しそうに言った。



「凄いわよねぇ…この国受け継いじゃうなんて。規模をこんなに大きくした大王さまの次とか、ちょっと怖いけどね」


「そんなこと言って…」


「名君と名高い王さまの次よ?ああ胃が痛くなりそう…」


「選ばれなかった他の方はどうなるの?」

「さあ…たぶんどこかの地方に飛ばされるか、官になるかじゃないかしら」