一人の女官は恋をした【短編、諸説あり】



切ない、今にも泣きそうな目。


姉を想う少年の目は、紛れもない男の目だった。




麗の恋心は、叶うはずがなかった。




「日子さま…」



木簡で記された手紙の文字をなぞり、ため息をつく。


表舞台にたった、うら若き隠された皇子。



日の目は見れたものの、彼は幸せなのだろうか。




姉への思いを抱えたまま、彼は生きるのだろうか。




(ならば私を選んで下さい、日子さま)



一生叶わぬ恋ならば。


せめて私を想って欲しい。



そう麗は願うのだ。



(父上からの…)



次に、麗は父からの木簡を手に取った。


こちらは暗号ではない。


なつかしい父の字に、顔が綻んだ。