……あたしとユキは、中学2年生から高校1年生のバレンタインまで付き合っていた。

浮気だなんだと言っていたけど、別れた理由はユキに好きな人ができたことだった。



優しいユキのそばにいることが好きで、離れたくなくて、別れなければいけないとわかっていたのになにも告げず。

ただ、ユキからの言葉を待っていた。



そして、バレンタインの日。

最後のあと、バレンタインのクッキーを渡したのを最後にあたしたちは別れたのだ。



春がきて、諦めることができたと思っていたのに、どうやらそうじゃなかったらしい。

ユキとの思い出に溢れる世界が辛くて、辛くて……、



「結晶」

「え、あっ、と、ヒカリ?」

「早くマフラー巻けよ。遅い」



素早く取られたマフラーがヒカリの手によって巻かれ、顔が覆われる。

ぷはっと顔を出すと、あたしの荷物を渡された。



やっぱり、ヒカリは優しいね。



猫っ毛でちょっと長めの髪をしたヒカリは、キリッとした一重の瞳なんかもあってすごくかっこいい。

肩下くらいまでの長さをした黒髪で、眉より上の前髪くらいしか特徴のないあたしとは違う。