ふっと小さな吐息のような笑う声。
「黒沢、髪ぐしゃぐしゃ。直しなよ」
「わ、」
髪を押さえる。
ありがとう、と返せばにこりと笑って別の人のところへ。
そう。
あたしの大好きだった、前髪ごとかき混ぜるような髪の撫で方。
彼はもう、それをすることはない。
自分でそっと髪を梳く。
昨日のユキとハルカちゃんを思い出した。
落ち着いてからふたりの姿を思い浮かべると、胸は痛む。
だけど、幸せそうな姿に、お似合いだったことにほっとした。
そのことが、嬉しいと思う。
────ユキといれば、あたしはいつだってほっとすることができた。
付き合う前も、別れる直前も、今でさえ。
痛みと安心がそばにあった。
でも、ヒカリは違う。
優しさを感じて嬉しくて。
傷を知って苦しくて。
切なく騒ぐこの心は罪悪感?
……きっと、そう。
ユキのときのような気持ちになんてなれない。
だから。
だから……違う、よ。

