「……ありがとう……ございます」


和希の姉として。


「和希をずっと見守ってくれて……」


あたしはテルさんに頭を下げた。



「俺は何もしてない」



……ううん。


いつか大翔が言ってた。


和希の一番の理解者は、テルさんだって。


凌牙に遠慮して、あの家で疎外感を抱いていたとしても。


テルさんが居てくれたから……。



嬉しい時も、悲しい時も。


きっといつでも和希に寄り添っていてくれたはずだから。


和希はきっと、自分というものを保てたんだ……。




「凌牙はそろそろ起きる頃だろう」


それは、凌牙の所へ行けと言われてるように思い。


「はい……」


あたしはゆっくり腰を上げる。


あたしを見ていないテルさんにもう一度お辞儀をして、一歩踏み出す。


動かした足は、一秒でも早く凌牙に会いたい一身で。


薄暗くなった長い廊下を、凌牙の部屋まで駆け抜けた。