涙が、零れていた。


……テルさんの瞳から。



声も表情も、いつもと変わらないけど。


作ることのできないその現象だけは、テルさんの心を素直に表現した。



「二宮から、あることないこと吹き込まれただろう。相当な葛藤があったはずだ。

それでも最終的に選んだのは……凌牙だったんだ……」


長年、凌牙と和希を見てきたテルさんだから流せる涙は、もう片方の瞳からも零れ落ち。


それを隠すように、テルさんは立ち上がった。






たった14歳の和希。


この多感な時にそんな生い立ちを聞かされたら、ヤケになって。


洗脳してくる壱冴に手を貸したっておかしくないのに。



それでも、和希は凌牙を……。


赤ちゃんのころから一緒に育った"兄"を、選んだ……。