「アイツには、さえねえよ」


「……」


当然のように流れた言葉に、鈍い痛みを感じる胸。



”させない”


それはやっぱり、喜んでなるものではないからだと、無意識で思っている表れ。


兄として、和希には"させたくない"と思うその気持ち。


この運命を背負うのは自分だけで十分。



それを言葉にしない凌牙の強さに、涙が溢れそうになるけど。



……グッとこらえた。


泣いてしまったら、凌牙の世界を否定することになるから。



端から見るより、その世界は深い闇に包まれているのかもしれない……。