「……優月、どうした?」


凌牙があたしの名前を呼べば呼ぶほど、つらくなる。


凌牙が呼ひたい"ユズ"は、本当はあたしじゃないから……。


「ううんっ……なんでもない」


胸の内は悟られたくない。


あくまでも、あたしはひっそり消えるつもりだから。


幸せだった思い出だけを胸に……。


「なんだよ、やっぱ痛ぇのかよ」


「ちがっ……」


手の傷をいつまでも心配してくれる凌牙の優しさに、もっと涙が溢れて言葉にならない。




「……凌牙、ありがとう」


でも、これだけは言いたかった。