『そうか……』


どうしたんだとか、そこで何があったのかとは聞かない壱冴は。


少しの沈黙のあと。


『俺が双葉を出たら、暮らす予定の部屋がある』


「…………部屋?」


『遠い親戚だかなんだか分からねえ奴が用意して、夏からそこに入れる様にはなってんだよ』


「え?そんな場所があったの?」


『罪悪感だろ。引き取りもせずに園に放りこんだんだしよ……』


「……」


そういう遠縁の人が居たんだ……。


居たにも関わらず、赤ちゃんのころから双葉園に入りっぱなしの壱冴が不憫にも思えた。