「おい」


呼ばれた先には、少し疲れた顔の凌牙が居た。


「あっ、お帰りなさい……」


朝早くから本家に行っていた凌牙に顔を合わせるのは、今日はこれが初めてで。


ぼーっとしていた思考を取戻し、椅子から立ち上がった。


「また来てるのか」


決して歓迎してる風でもない凌牙の目線は、若菜。


挨拶をのぞけば、2人はまだ会話をしたこともないだろう。


この家が誰の管理下にあって、凌牙が本当は何者なのかを知らない若菜にとって、それほど重要人物だとは考えていない様子。


今もトランプに夢中な若菜は、凌牙が入って来たことにも気づいていない。