「彼も昔、双葉園に居たの。すぐに柳迅会に養子に出されたみたいだけど……」


こんなこと、あたしが説明するまでもなく、知ってるか……。


……だけど、これは知らないでしょ……。


「あたしのことを、覚えていてくれたの……」


「……」


「今は、暴走族の総長で、その仲間と一緒にここで暮らしてる。ここの人たちは悪い人じゃない。あたしも、最初は暴走族っていうだけで誤解したけど、そうじゃないって……」


みんなが息を潜めて待機してる、キッチンの方を向く。



見ようともしなければ、何も見えないし。


分かろうとしなければ、何も分からないんだと。


暴走族だろうがヤクザだろうが、ここのみんなは一人一人温かい心を持った人間。


誰も何も、特別なことなんてないんだと。