思わず嫌なことまで思い出してしまいそうになって、向こうからは人が走って来ているのに足を止めた。
ふるふるっと首を振る。
くぅん? と不思議そうに見上げるシュガー。
しゃがみこんで、そっと手を伸ばせば指先が舐められた。
「シュガー……」
どうしたの、と語りかけるつぶらな瞳。
でも、なにかがあったわけじゃないから、仁葉はなにも言えない。
思わず泣きたいような気持ちになってしまって、まばたきを繰り返す。
横を通ろうとした人を避けようとした時、見覚えのある姿に滲んだ涙が消えると同時に息を呑んだ。
そう。
ランニングをしていた、
「坂元くん……⁈」
彼と目が合った。

