「はぁ……は、っ……」
わかってた。
わかってたことだけど。
「梓ちゃ、ん、はっやい……」
ゼーハーと落ち着かない呼吸。
膝に手をつく。
梓ちゃんはぶっちぎりだけど、他のみんなもなかなか早かった。
……あれ、待って。
もしかして仁葉が遅すぎるだけ?
どうしたらあんなに早く走れるんだろうと仁葉はうんうん唸る。
「仁葉、お疲れ様」
「梓ちゃん……」
なんでそんな元気そうなの。
はい、タオル! と差し出された。
えっと……うん。
ありがとう。
それはいらないです。
記録用紙にタイムを記入してもらって、グラウンドとはおさらば。
体育館に移動する。
その時、用紙が風で飛ばされる。
「あ、待って待って」
追いかけて走って、
「危ない!」
飛んでくるボールが見えた。

