「仁葉、なに見てるの?」
「ソフトボール投げの方。
ほら、見て見て。坂元くんがいるよ」
指差して、梓ちゃんに示すともう! と言いながらもくすくすと楽しそうな黒い反応。
「仁葉ってばそんなもの見て!
目が腐っちゃうわよ!」
腐らないよね。
坂元くんはただの人だよ?
「ねぇ。仁葉、は……坂元が好き?」
「え、うん。好きだよ」
「じゃあじゃあじゃあ!
あたしのこと、は……?」
思わず口元を押さえて笑った。
梓ちゃんってば、本当に可愛いよね。
ヤキモチなんだ。
「梓ちゃん、大好きだよ」
ふるふると震える梓ちゃん。
そのまま仁葉に飛びついて、
「らぶ!」
いつもみたいに天使ーっ! と叫んだ。
「仁葉たちー、もうすぐ順番だよー」
梓ちゃんとじゃれていると、クラスの子に声をかけられる。
その言葉に振り返った。
「はーい、ありがとう!
梓ちゃん、行こっか」
梓ちゃんはにっこり笑って頷いた。

