仁葉の言葉に乗せられるように梓ちゃんが「そうよ、とても嫌なの」と口にする。
「今の仁葉は────嫌いよ」
うん。
……うん。わかってる。
ちゃんと、仁葉、わかってたから。
「いいよ」
「え?」
「嫌いでいい」
笑って、梓ちゃんに背を向けた。
「ま、待って」
腕を引かれて、足が止まる。
「仁葉がふたりの過去の話を無理に聞き出そうとしなかったの。
覚えてるかなー?」
「ええ、もちろん。
……だからあたしたちは仁葉と親しくなったんだもの」
「えへへ。
でもね、それちょっと違うんだ」
そう言えば、どういうこと? と尋ねられた。
「仁葉がなにも訊かれたくなかったから。
だから仁葉も訊かなかっただけなんだよ」
だからもう、やめて。
そう言えば、梓ちゃんに掴まれていた腕がするりと抜けた。

