「ひと、は……?」
恐々声をかけてきた梓ちゃん。
仁葉はくるりと振り返る。
反応があったことにほっとするふたりにいつもと同じように「なぁに?」と首を傾げてみせる。
「あの、おはよう……」
「おはよー!」
にっこり笑って、朝の挨拶。
だけど自分からそれ以上の言葉を口にしない仁葉に、ふたりが気まずそうに顔を合わせた。
それを目をそらされたということにして、仁葉はまた背を向けてクラスの女子の輪へと歩き始める。
あ……、と名残惜しそうな声なんて、知らない。
だって、仁葉はふたりに言ったよ。
そばにはいられないって。
もう、仁葉が自らふたりに近づいて、声をかけて、時間を共にすることはない。

