「あ、鈴宮だ。久しぶりー」
「わー、藤原くん! おはよー!
クラスで遊んで以来だねー!」
靴箱のそばで藤原くんに会い、わーわーと盛り上がる。
んんん、藤原くん、しばらく見ないうちにすっかり小麦色の肌を手に入れてる!
陸上部で頑張ってたんだね。
話しながら、そのまま一緒に教室へ行く流れに。
言葉を交わしながら教室へ1歩足を踏み出せば、待っていたかのようにガタッと立ち上がった梓ちゃん。
それからその後ろに座って仁葉を見つめる輝くん。
仁葉は自分の席に荷物を置いて、そして、
「……」
ふたりに声をかけることなく背を向けた。
梓ちゃんに嫌がられていた頃も。
輝くんの過去を聞いた直後も。
なにがあっても1度だって欠かさなかった挨拶。
仁葉は出会ってから初めて、────ふたりに対して口にしなかった。