だから後ろは振り向かない。
だって、時の止まった君がいるから。
前は見えない。
だって、道を照らしてくれる君はいないから。
真っ暗闇の道の上、ひとりぼっちの仁葉。
悲しいことには気づかないように目を閉じて。
がむしゃらに、ただ走って来た。
約束のために、……走って来た。
足を止めてしまったら、その闇に囚われるとわかっていたから。
手を引いて歩いてくれた君がここにいないのなら、走るしかないんだもん。
ばかで鈍感な仁葉。
気づかないふりは得意だよ。
光ちゃんの残した約束が、言葉が。
仁葉の中の唯一の光(ひかり)だと信じている。
信じて、ただ走って、走って。
全てのことから目を伏せて、笑って優しく生きていく。
仁葉は、光ちゃんとの約束を守るんだ。