「……」
ゆったりとした動作で、ご飯を口にする。
味のしないご飯をひたすら咀嚼していると、ママとパパが顔を見合わせた。
「仁葉」
「なぁに?」
顔をふたりに向ければ、パパが真剣な瞳をしている。
そして、くしゃりと顔を歪めた。
「小学校を卒業したら……引っ越し、しようか」
予想外な言葉に目を見開いた。
「引っ越し……?」
「うん。ここは光くんとの思い出が多すぎて、仁葉は辛いみたいだから」
確かに。
遊んだ公園も。
曲がり道も。
誕生日プレゼントを買った駅前も。
病院に行く時のバス停も。
どれもこれも、光ちゃんに関連づいている。
「だから、仁葉の心が壊れる前に、この街から離れよう」
「……」
光ちゃんとの思い出から離れて。
きっとそうしないと、仁葉はもう無理なところまできてしまったから。
「────うん」
光ちゃん、弱い仁葉でごめんね。

