「仁葉、ご飯よ」
「……うん」
ゆっくりと口を動かして、部屋を覗くママに返事を返す。
横になっていたベッドから体を起こして、あとに続いて階段を降りる。
トン。
────トン。
光ちゃんママから電話がかかってきたあの日を彷彿とさせる、音。
仁葉は、生きている。
確かに生きているけど、だけどもう、空っぽなの。
光ちゃんを失って、仁葉の心を揺らすものを。
なにより大事なものをなくしてしまった。
その仁葉の一部はもうきっと、……ううん。
絶対に戻らない。
光ちゃんが仁葉の元には戻って来てくれないように。
仁葉はもう2度と、以前のような明るい気持ちで日々を過ごすことはできないの。

