「笑っていてね」



唐突にそう言って、光ちゃんは笑った。

くしゃりと顔を歪めて、必死に笑った。



「ずっと、ずっと笑っていてね」



それは、光ちゃんが初めて……。

初めて仁葉に見せてくれた、弱さ。



痛くて、痛くて、苦しいくらいの笑顔。



「大丈夫だよ!」



大きな声で、仁葉は満面の笑みを浮かべた。



少しでも君の心が軽くなるように。

ほっと息が吐けるように、と。



いつだって、光ちゃんが仁葉に望むのは笑顔で。



笑顔だけ……。

たったひとつだけだったから。



それを叶えないわけにはいかなかった。



光ちゃんの首に腕を回して、強く強く抱き締めた。



「そのままの仁葉が大好きだよ」

「仁葉は、光ちゃんがどんなふうに変わっても大好き」



ただ。ただ笑った。



光ちゃんの未来を信じて、約束を信じて。



今までに何度も告げた「大好き」を、飽きもせずただ繰り返した。