「でもね、仁葉は勉強が嫌いなのに頑張ってくれるでしょ。
それで、問題が解けたらちゃんとお礼も言ってくれる」
「それは普通のことだよ?」
なにかしてくれたらありがとうって言うの。
幼稚園の子でもできるよ。
「うん、でもできない人もいるからね。
当然のようにできる仁葉が素敵なんだよ」
ふーん、と小さく口にする。
そういうものなのかなー。
仁葉にはよくわかんないや。
「だからね、なんでも訊いていいんだよ。
仁葉のためなら、きっと僕はなんでもできるから」
それは、本当に算数のこと……?
なんだか、他の意味もこめられているみたいに聞こえるよ。
でも、仁葉には光ちゃんの言葉に隠されたこと、わかんない。
それで、そのことだけはきっと、訊いてみても光ちゃんは「なんでもない」と誤魔化しちゃうんだよね。
「よし、じゃあ納得してもらえたところで算数しよっか」
「……はーい」
さっき放り投げた鉛筆をもう1回握り締めて、体を起こした。
「ねぇ、光ちゃん」
「ん?」
「大好きだよ」
「ははっ、うん。僕も大好き」

