「久しぶりね、仁葉ちゃん」
玄関の扉を開けてくれた、光ちゃんママの懐かしい笑顔。
しわが増えて、髪の長さも変わって少し白くなって。
だけど、確かに光ちゃんママ。
仁葉もママも挨拶を済ませて、中に通してもらう。
「暑かったでしょう」
「今日は猛暑日らしいわよ」
ママたちのそんな会話を聞きながら、廊下を進む。
まずはこっちよね、と言いながら光ちゃんママがふすまを開ける。
「光、仁葉ちゃんたちが来てくれたわよ」
促されるままに足を進めて、ぺたりと座りこむ。
全く変わっていない姿にたまらなくなる。
ああ、もう。
仁葉はだめだなぁ。
1番の笑顔、浮かべたかったのに。
心が痛くて、光ちゃんに見せたかった笑顔は難しくても。
それでも、仁葉は笑った。
────────光ちゃんの遺影に向かって。