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ガタン、と動き始めた電車が揺れた。
外は暑かったから、中の涼しさにほっと息を吐く。
今日はいつもと違って、フリルやレースのついていないワンピースにカーディガンを羽織っただけというシンプルな格好。
かかとのない靴を揃えるようにぎゅっと足を閉じて、座る姿から大人しく。
固く握り締められた拳は力を抜くことができない。
「今日は暑いわねぇ」
そう言ったママがふわふわと扇子で風を送ってくれる。
「……」
仁葉と同じ、癖の強い髪をひとつに縛ったママ。
どうかした? と言う拍子にゆらり、と揺れる。
「もしかして、緊張してるの?」
「……うん」
「そうねぇ、仁葉は引っ越しして以来だもんねぇ」

