「ほら、梓。次、お前の番」
「あー、ありがとう」
立ち上がっていた輝くんが、仁葉の隣にぽすんっと座る。
ふたりは立ち上がって歌う主義みたいで、自分の番の時は前に立つんだ。
仁葉も同じようにしたら、少しは上手く歌えるかな?
「そういえば、藤原から陸上部に誘われたんだ」
「え、そうなの?」
思わず身を乗り出して、輝くんの顔を覗きこむ。
そっか、うん。
藤原くんって確か陸上部だったもんね。
それにしても、いつの間に輝くんに話したんだろう。
っていうか、そんなに仲よくなってたなんて知らなかった!
輝くんも、少しずつ仁葉たち以外とも関わるようになってるんだ。
ちょっとさみしいけど、いい傾向だよね。

