「鈴宮って自分で弁当作ってんのか?」
会話に口を挟むようになった坂元くん。
梓ちゃんにあーんをしてあげながら、顔を向ける。
「んーん、いつもはママが作ってくれてるよー。昨日の晩ご飯の支度は仁葉も手伝ったから、今日のお弁当用に小さいのも作ってたんだ」
「ふーん」
「ハート型、可愛いでしょー!
坂元くんも食べる?」
もぐもぐ、にまにま。
嬉しそうにしていた梓ちゃんがまたもや恐ろしい形相に。
「……俺はいい」
坂元くんが空気を読んだ。
「ほら、仁葉。
そんなやつにあげなくていいの。
さっきも抱きついたりして、少し不用心よ」
「え、どうして?
坂元くんは大事な友だちなのに?」
「……」
沈黙が落ちる。
仁葉がきょとん、としていると、
「ざまぁ!」
梓ちゃんが坂元くんをあざ笑った。
彼女にしてららしくない言葉遣いにびっくりすると、梓ちゃんは一気にご機嫌に。
仁葉にはもう、なにがなにやらわかりません。

