「……」
カタン。
坂元くんが黙って仁葉の持ってきた椅子に座る。
「弁当、早く返せ」
「……一緒に食べてくれるの?」
頬杖をつきながら、「誰かさんが落ちこんで鬱陶しいからな」と笑顔で応えてくれた坂元くん。
仁葉は浮かぶ笑みをこらえられず、ありがとう! と坂元くんに抱きついた。
さっきの、訂正しなきゃね。
坂元くんは、屋上で話をした以降とも違う。
前よりずっと────優しくなった。
でもきっと、これが本来の坂元くんなんだよね。
柚季さんにもこんな態度だったのかな。
そう思うと、微笑ましく感じるとともに、ふたりの2度と想いが重ならない関係にちょっぴり切なくなった。

