「悪い、鈴宮。
俺の弁当取ってくれ」
「あ、坂元くん」
梓ちゃんが坂元くんの席に座ってしまっているせいで、取れないみたい。
席を外していた彼のために手を伸ばす。
────坂元くんに土手で仁葉の考えを告げてから約1週間が過ぎた。
泣いてしまったことで数日は恥ずかしそうにしていた彼だけど、慣れたのかな。
屋上で話をした以降と同じような態度に戻ってきた。
「ここであたしに頼まないあたりが腹立つわね」
「どうせお前は取ってくれないだろ」
「当然じゃない!」
梓ちゃん、普通にひどいよ、それ。
手の中の彼のお弁当をむぅ、と見つめる。
ありがとう、と口にした坂元くんには渡さず、椅子を引っ張って来た。
「鈴宮?」
「坂元くんも一緒に食べよう!」

