毎日、ただ走っていた。



息を荒げて、足を動かして、死にそうって何度も思って。

それでも、棒になりそうな足を動かし続けたら、光があるような気がして。



必死に光を追いかけた、その先に。

充足感と、霞む視界に輝く柚季の笑顔があったから。



それが嬉しくて。

それが愛しくて。

それが大切で。



俺は、どれだけ苦しくても足を止めなかった。






タイムが伸びたら喜んでくれて。

落ちこんでたら励ましてくれて。

たまに甘えたように寄り道をせがんできたり。

雨の日も自転車に乗って笑っていた。



一緒に同じ道を、歩んでくれたんだ。






だけどもう、そんな柚季はいない。

俺のそばには、いない。






朝7時、公園のベンチのそば。

赤い自転車と、弾けるような君の笑顔。

毎朝欠かさなかった待ち合わせあとのランニング。



それは、大切だった時間。

俺のなくしもの。